特別インタビュー 正会員 田丸 稔
本会の正会員の田丸稔氏が、東京都美術館主催の「都美セレクション 新鋭美術家2015」展の出品作家に選出されました。
この展覧会は2014年5月に東京都美術館で開催された「公募団体ベストセレクション美術2014」展の出品者の中から
審査会によって、これからの活躍が期待される新鋭作家をさらに5名選出し、個展形式で紹介する注目の展覧会です。
今回は田丸氏に、2015年2月から開催の「都美セレクション 新鋭美術家2015」展に出品予定の作品やメッセージ
などを聞いてみました。

田丸:近作を中心に、この展覧会のための新作1点を加えた合計5点を出品します。今回選抜されたのは、日彫展に出品した「叙事詩の男と馬」という作品が評価されてのことでしたので、このシリーズを中心に5点を選びました。男性の人体と馬の頭部を組み合わせて構成した作品です。私なりの「彫刻らしい量塊性に根ざした強い存在感」をかたちにしようと試みました。
彫刻制作で重視していることはどんなことですか。
田丸:現在は非常に多様な表現分野や様式が存在しますが、そのような中で、平面でなく立体でしかできないこと、また立体の中でも、彫刻表現でしかできないこと、そして、それらのすべての根拠を自分との関わりに求めて、「私にしかできないことはなにか?」ということを特に重要に考えています。
彫刻をはじめた経緯を教えてください。
田丸:とにかく絵を描く等美術に関わることができる仕事に携わりたい、なおかつ時代の変化に振り回されず自立できる仕事を選びたい、ということで美術の教員を目指して教育学部に入学したのですが、そこで彫刻家である恩師に出会ったことがすべての始まりです。いろいろな悩みの種を抱えていた私に、あっさりと、そして実に明快に「これで良いのだ」という自己肯定感を与えてくださったのがその恩師であり、彫刻の世界でした。おかしな話ですが「多くの人が、始めても物理的困難さで辞めていく」という話を聞いたことも、「ならば続けていれば第一人者になれるはずだ」という確信を与えてくれました。
近況と今後の作品制作はどのようなご予定ですか。
田丸:自分自身の表現のありようを見直そうと、一昨年から今年にかけてはこの「叙事詩の男と馬」を連作してきました。このセレクション展と今回の日彫展で、ひとまず区切りをつけて、その後は、私にとってのもう一つの重要なテーマである女性像に、しばらく取り組んでみたいと思っています。
最後に、鑑賞者やこれから彫刻を始める人へのメッセージをお願いします。
田丸:彫刻表現は非常に難しいものだと思いますが、しかし才能やちょっとした器用さではどうにもならない分、経験や年齢を重ねたことが如実にかたちになって表れるという意味で、際立って優れている分野だと思います。自らの感覚の内側に思いを馳せて、表現したい「かたち」をつかむことができた時の、なんとも言えない充足感は何にもかえがたいものです。神が人類をつくりたもうたのだとしたら、きっとこのような気分なのだろうと思います。そんな「神の営み」を辿ることに言葉にできない魅力を感じてこの世界に入り、そしてこれからも続けて行こうとしているのが我々だと思っています。この価値感を共有できる人たちとこれからも出会い、仲間を増やして行くことができたらと、心から願っています。
聞き手:日本彫刻会出版・広報委員
2015年1月
2015年1月
「都美セレクション 新鋭美術家2015」展は2015年2月19日(木)から3月15日(日)まで約1か月間、東京都美術館ギャラリーCで開催されます。
展覧会の最新情報、詳細は、「都美セレクション 新鋭美術家2015」展の公式ページでご確認ください。